魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そこには、なんの変哲の無い青空が広がっているだけだが……なぜだか妙な胸騒ぎを感じ、ゲルシュトナー領で言われたメレーナからの忠告が思い出される。

「まさか……だよな」
 
 ベルージの女王は、やすやすと敵国の人間と通ずるような人物ではない。この侵略戦争に裏はない、そのはずだ……。

 だが俺は背中をぴりぴりと刺す妙な気配を拭えずに、王都へ続く空をひたすら睨み続ける。
 そして得体の知れない危機を直感した。焦りを顔に滲ませ、敵の出方を窺うつもりで立てた援軍待ちの作戦を、すべて捨てる。

(なにが起きてるってんだか分からねーが……とっとと終わらせた方がよさそうだな……)

 俺はこういう場での勘を外したことがない。階下の広間に辿り着くと、そこに集っていた兵士たちに号令をかける。

「今日は大一番になりそうだ、よろしく頼むぞお前たち! これまでは守りに徹していたが、ここからは打って出る。ボースウィン領軍は、国内でもっとも戦の経験を積んできた勇敢な精鋭たちだ。どんな戦いになろうと、怯むことなく全力を出し切れると信じてる。さあ、身の程知らずのバカどもを叩き潰して、二度と攻め気を起こさないよう、泣きっ面で自分の国に逃げ帰らせてやろうぜ! んじゃ、出るぞ!」
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