魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

7.鋼の恋歌 -obsession-

 その日、先手を取ったのはボースウィン領軍だった。
 全軍の三割を拠点に残し、残りの七割で迅速に突撃を試みる。

 守備に回る側がいきなりここまでの攻勢を行って来るとは思わなかったのか、ベルージ王国側の横一線の防御陣は、大きく二の足を踏み内側に押し込まれていく。

 当然、その時点でお互いの結界魔法は意味をなさなくなる。

「全軍、とにかく押し込め! 今は相手の部隊をできるだけ削る時だ!」

 そこで俺はさらに軍の圧力を強めた。

 ベルージ王国軍は、やはりこちらが守りを固めるのを待って、なにかの策を実行に移すつもりだったのだろう。出足が遅れている。ここで自ら前線にて指揮を振るい、相手軍の本体まで到達する……!

 数に劣るボースウィン領軍だが、その鍛え方は並大抵のものじゃない。魔法士の数も充実している上に、シルウィーが苦労して再生させてくれた魔石の在庫も潤沢だ。しばらくは魔道具の魔力切れを気にせずに戦うことができ、瞬く間に相手軍の中央も穴を掘ったようにへこんでゆく。
< 1,024 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop