魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 魔道砲によって打ち出され、空中に充満しているあれはおそらく、魔石――しかもそれを、魔力を宿したままの状態で砕いたもの。いわば、金貨袋を空中でばら撒くようなもので、一発ごとにどれだけの国家予算が失われているか想像がつかない。

 だが、それをボースウィン領軍に向けて散布したことで、こちらの空域は無制御状態の魔力で充満した形になり、繊細に照準を計算して放つ魔法士たちの魔法にまで影響を及ぼしてしまっている。

「成金王国が……バカげたことを。全軍、ただちに魔法攻撃を中止! 味方にまで被害を及ぼす恐れがあるぞ!」

 声を張り上げる間にも、勢いを取り戻すベルージ王国軍。

 これだけの量の魔石だ。ボースウィン領軍だけではなく、敵軍にも同じような影響が出ていてもおかしくはない。しかし……元々ベルージ王国軍は魔法士が少ない構成だ。

 あちらの国民のほとんどが魔法を使えないのは、国民が魔力自体を持っていないわけではない。元々、魔力を外に出す体内の器官が相当に少ない民族の集まりだからなのだが、しかしそのことは、彼らに別の強みをもたらしている。体内で魔力を消費し肉体の機能を向上させる、身体強化系の魔法の扱いは、彼らの方が一段も二段も上なのだ。

 今までの善戦が嘘だったかのように、押し込まれて始める自軍。それを立て直させるために、俺はさらに前へと進んだ。
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