魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 挑発か、はたまた本気でそう思っているのか……。さすがに俺にもプライドがある。ここまで舐められて、魔法が使えるまで逃げ回るのも格好がつかない。

 ちらり周りを見渡せば、いつの間にか、全員が息を合わせたかのように周囲は凪いでいる。
 通常ではありえない、戦が始まった直後の総大将同士の決戦が、戦場に暗黙の了解を強い……彼らも見定めようとしているのだ。どちらが生き残り、勝利を掴み取るのかを。

 それを察した女王が、アピールするように両手を広げ、こちらの攻撃を待ち受ける。

「さあ、もっと本気を出して、余を楽しませよ! こちらが勝てば、侵略されるボースウィン領に住む民が、どんな扱いを受けるかわかっているだろう!」
「……っ、させねえよ! そんなことは!」

 その一言で、俺はようやく戦いの前に感じていた後方への不安を断ち切ると、全開の魔力を身体に走らせる。今後、ベルージ王国の脅威から領民を守るためにも、ここで目の前の禍根を断つつもりで。

「おおおぉぉぉぉっ!」
「その意気だ! そうでなくてはここを訪れた意味がない! お前のすべてを余にぶつけてこい!」
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