魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
(たまったもんじゃねえぞ……親父!)
「アハハハハ! 戦いは楽しいな! こうして血を激しく巡らせている間は、あらゆることを考えずに済む! 家柄も、身分も、性別も……なにもかもがこの場では意味を持たない! 強さだけだ! ただ、この身体だけで私たちは競っている……いったいどちらがより優れた存在であるのか、その価値を!」
容赦のない斬撃が続き、俺の身体に掠ったとは言えない傷を刻む。女王の顔は喜悦を浮かべ、すべてのしがらみから解放されたかのような幸福感に満ちていた。
だが、一方で俺は、彼女の言葉に虚しさも感じていた。富、名声、美しさ、強さ。彼女のような、なにもかもに恵まれた者ですら、日々の暮らしに満たされていない。
終わりなき、生命の呪い――幸せになればなるほど、次の幸せが遠くなってゆく。
そんな暮らしの中で、彼女にとって親父の存在は、もしかするとたったひとつの救いだったのかもしれない。あの人を倒そうと考えている間は……そこに向かって手を伸ばし、越えようともがく間は、あらゆる苦悩を捨て、望みを抱き続けていられたのだろうから。
「あんたも……親父が居なくなって、寂しかったんだな」
「…………なに?」
頬を刃が掠め、傷口から顎に血が伝う。しかしそんな痛みも俺は気にせず、思ったことを口に出す。
「アハハハハ! 戦いは楽しいな! こうして血を激しく巡らせている間は、あらゆることを考えずに済む! 家柄も、身分も、性別も……なにもかもがこの場では意味を持たない! 強さだけだ! ただ、この身体だけで私たちは競っている……いったいどちらがより優れた存在であるのか、その価値を!」
容赦のない斬撃が続き、俺の身体に掠ったとは言えない傷を刻む。女王の顔は喜悦を浮かべ、すべてのしがらみから解放されたかのような幸福感に満ちていた。
だが、一方で俺は、彼女の言葉に虚しさも感じていた。富、名声、美しさ、強さ。彼女のような、なにもかもに恵まれた者ですら、日々の暮らしに満たされていない。
終わりなき、生命の呪い――幸せになればなるほど、次の幸せが遠くなってゆく。
そんな暮らしの中で、彼女にとって親父の存在は、もしかするとたったひとつの救いだったのかもしれない。あの人を倒そうと考えている間は……そこに向かって手を伸ばし、越えようともがく間は、あらゆる苦悩を捨て、望みを抱き続けていられたのだろうから。
「あんたも……親父が居なくなって、寂しかったんだな」
「…………なに?」
頬を刃が掠め、傷口から顎に血が伝う。しかしそんな痛みも俺は気にせず、思ったことを口に出す。