魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「憧れたやつが、急に目の前から消えちまった時……どうしちまったらいいか分からなくなるあの感覚は、ちょっと分かる。親父もそうだったし、俺にとってはマルグリットがそうだった。あんたがそいつのことを知ってるかは知らねえが……」
すると、女王はふっとわずかに悼むような笑みを浮かべた。
「……いや、聞き及んでいる。帝国復興の立役者、黒き賢者マルグリットだな。生きていれば、今の私とそうは変わらぬ年だったろう。残念ながら直接会ったことは一度もないが、同じ強き女性として、一度話をしてみたいとは思っていた」
帝国内に名が轟くということは、そういうことだ。たった数年の功績とはいえ、マルグリットの名は他国の人々の記憶の中にまで広まり、今も星のように輝いている。
しかし、もう彼女はいないし、親父もいない。
「死を悼んでいたい気持ちは分かるさ。でもな……いつまでもそこで立ち止まってるあんたと違って、俺は俺なりに、この十数年間もがいてきたつもりだ。その結果を、今から俺があんたに見せてやるよ。魔法も使わねえ、小細工なしの一発勝負だ。あんたが、ここで親父が何を遺していったのか確かめてえっていうなら……受けて見せろ」
プライド頼みの真正面からの、バカげた挑戦状……。
すると、女王はふっとわずかに悼むような笑みを浮かべた。
「……いや、聞き及んでいる。帝国復興の立役者、黒き賢者マルグリットだな。生きていれば、今の私とそうは変わらぬ年だったろう。残念ながら直接会ったことは一度もないが、同じ強き女性として、一度話をしてみたいとは思っていた」
帝国内に名が轟くということは、そういうことだ。たった数年の功績とはいえ、マルグリットの名は他国の人々の記憶の中にまで広まり、今も星のように輝いている。
しかし、もう彼女はいないし、親父もいない。
「死を悼んでいたい気持ちは分かるさ。でもな……いつまでもそこで立ち止まってるあんたと違って、俺は俺なりに、この十数年間もがいてきたつもりだ。その結果を、今から俺があんたに見せてやるよ。魔法も使わねえ、小細工なしの一発勝負だ。あんたが、ここで親父が何を遺していったのか確かめてえっていうなら……受けて見せろ」
プライド頼みの真正面からの、バカげた挑戦状……。