魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 だが、ベルージ女王は今までの笑いを潜めると、真顔でそれを受け止める。

「……いいだろう、私も知りたいと思っていた。はたして、この虚ろな未来の先になにか待っているものはあるのか。いつでも構わぬ……やってみろ」

 女王は余計な手出しはするなと、こちらに走り込みかけた側近たちを手で制した。
 俺はふたつに分けていた氷の剣をひとつに纏めると、馬上でピンと背筋を伸ばし、真正面に剣を構えたベルージ女王と同じようにして向き合う。

 張り詰めた空気の中では……横槍どころか、身じろぎする音すら聞こえてこない。呼吸すら潜められ、全員の視線が、勝負が決する瞬間を見逃すまいと一点に集中する。

 俺は無言で、全ての意識が剣を握る手に集約されるのを待った。
 ベルージ女王も、細く息を吐き出しながら、細めた瞳をこちらからぴくりとも外さない。

「行くぞ!」
「来い!」
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