魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「全軍に告げる! ラッフェンハイム帝国への領土侵攻はこれで終わりとする! 敗戦の責は私が負う……今後のことは城に帰ってからだ、撤収するぞ!」
「「ハ、ハッ!」」
彼女は戸惑う周りを一声で従わせると、こちらをちらと振り返り、「そうだ。ヴェロニカという女には気を付けろ」とだけ警告した。
その後、背中を見せて悠然と去っていく。最後にくれた言葉が気にはなりつつも、俺は敵軍が引いていくのに兵士たちが追い打ちをかけないよう見張りながら、大きく肩を下げる。
とにかく、これでひとつの戦争が終わり、和平への道が開かれた。
以後完全にベルージ王国がこちらと友好的な関係を結べるようになるというのは、希望的観測が過ぎるだろう。しかし、長い時をかけて少しずつ関係を修復していくことは決して不可能ではないはず。
役目は果たした。これで大手を振って城へと帰れる。そうしたら……。
(後少しだぜ……シルウィー)
俺は薬指の指輪を額に当てると最愛の婚約者の顔を思い浮かべ、最後の障害に打ち勝つイメージを固めた。
「「ハ、ハッ!」」
彼女は戸惑う周りを一声で従わせると、こちらをちらと振り返り、「そうだ。ヴェロニカという女には気を付けろ」とだけ警告した。
その後、背中を見せて悠然と去っていく。最後にくれた言葉が気にはなりつつも、俺は敵軍が引いていくのに兵士たちが追い打ちをかけないよう見張りながら、大きく肩を下げる。
とにかく、これでひとつの戦争が終わり、和平への道が開かれた。
以後完全にベルージ王国がこちらと友好的な関係を結べるようになるというのは、希望的観測が過ぎるだろう。しかし、長い時をかけて少しずつ関係を修復していくことは決して不可能ではないはず。
役目は果たした。これで大手を振って城へと帰れる。そうしたら……。
(後少しだぜ……シルウィー)
俺は薬指の指輪を額に当てると最愛の婚約者の顔を思い浮かべ、最後の障害に打ち勝つイメージを固めた。