魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「よし……! 皆、勝利の雄たけびを上げろぉっ! これからのことは後で考えればいい! 今は、領地に住む家族たちのもとへと元気な姿で戻れることを祝おうぜ! 完全勝利だ!」
「「オオ…………ウオオオーッ、ボースウィン領万歳! 英雄スレイバート、万歳!」」

 少しずつ、勝利の実感を噛み締めてきた兵士たちに喜びの表情が浮かび始め、俺も凱旋に備えて再び馬の背に跨ろうとしたところだった。

「どけ、どいてくれっ! スレイバートぉっ……すぐに砦に戻れ!」
「なんだクリム爺!? いったいなにがあった!?」

 必死の形相で馬に乗って隊列をかき分けてきたのはクリム爺か。

 その声を聞きつけた俺は馬を走らせながら説明を乞う。あの汗の掻きよう、尋常な事態じゃない。

 そして同じように並んで馬を駆けさせながら、早口で彼が告げたのは、信じ難い最悪の報告だった。

「軍が……帝国軍が! 背後から我々目掛けて攻めてきおった! やつらは我々を反逆者扱いで討つつもりじゃ!」
「なっ――!?」
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