魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 クリムの呆然とした呟きが、逆に俺を冷静な方へ立ち返らせる。

「とにかく……攻撃してくるなら対処しねーわけにはいかねえ。悪いが、兵士たちにはもうひと働きしてもらう。砦の内側に向かって部隊を展開させ、防御姿勢を取らせるよう、各部隊長に連絡。くれぐれも兵士たちに軽率な行動は取らせないよう固く言い含めろ」
「ハハッ!」

 伝令役の兵士たちにそう命じると、俺は急ぎ階下へと降りてゆく。
 やつらの布陣の中に、見過ごせないものを確認して……。

「おい、スレイバート! どうするつもりなんじゃ」
「……さっき上からちらっと見えた。あれを率いているのは、皇太子の野郎だ」
「なんじゃと……!?」

 クリム爺の眉が跳ね上がり、俺は憎々し気に舌打ちする。

「おそらくだが……ベルージ王国との戦にかこつけて俺を内外で挟撃し、葬るか、捕えるかするつもりだったんだろ。それが失敗に終わり、力づくで出て来やがったってところなんじゃねえか?」
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