魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 クリム爺が言わんとすることは分かる。俺も結婚間近でシルウィーとの約束も守れず、意志を継ぐ者もいないままここでくたばっちまうなんざ絶対にごめんだ……。

「しっかりしろよ、あんた、これまでこの城をその分厚い身体で守り通して来たんだろうが。それに無策って訳じゃない、当てはある。今は俺の言葉を信じて、一緒に戦ってくれ……クリム」

 俺が胸甲を強く叩くと、歴戦の老将軍は観念したように目を閉じた。

「すっかりでかくなりおって……。わかった……もうここの領主はお前じゃ、お前がそうと決めたのなら、わしもこの身を尽くして盾となることしかできん」
「ああ、よろしく頼む」

 そして俺たちは連れ立って砦の内側……王都の方向へ続く平野に出て、すでに着々と陣形を整えつつあるボースウィン領軍の中央で声を張り上げた。

「待たせたなお前ら! 物見から話を聞いて不安がっている者も多いと思うが、これから俺たちは……王都からやってきた皇太子の軍を迎え撃たなきゃならなくなった。それも大量の魔物付きでな!」
「…………そんな」「せっかく他国から国を守り通したのに……」
< 1,049 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop