魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
被害はさほど出なかったとはいえ、先程大きな戦いを切り抜けたばかりの兵士たちの心の消耗は著しい。だが、彼らにはここでもうひと踏ん張りしてもらわないとどうしようもない。やつらをやり過ごせば、相当数の魔物の脅威が領内にばら撒かれる。
そこで俺は、ひとりひとりの兵士に向けて提案した。あの恐ろしい部隊に立ち向かってもらえるように……。
「どうしても離脱したいという者は止めないし、咎めもしない。だがな……これだけは肝に命じてくれ。やつらが次に襲うのは、このボースウィン領の各集落だ。もしここで俺たちが負けたら……お前たちの家族や、ここで戦う俺たちを支援する近隣の街の住民が真っ先に襲われる。お前たちは、はそういうことをさせないためにここに集まってくれたんじゃないのか?」
誰しもが未だ不安そうな顔で俺を見つめているが、彼らにはもう一度思い出し、向き合ってもらわなければならない。どうして、この領軍に兵士として志願してきたのかを。
もちろん……生きる糧を得るため、という者が一番多いはずだ。だが、それだけではきっとないと俺は信じる。家族や仲間の安全を……そして、自分が生きていくことを選んだこの場所を守ることができるのは、自分たちの手でしかない――そうした気持ちがなければ、到底命懸けのこんな場所に逃げ出さずに立つことなど、できはしないはずだから。
ならば俺のすべきことは……そんなやつらの意志を、束ねること。
そこで俺は、ひとりひとりの兵士に向けて提案した。あの恐ろしい部隊に立ち向かってもらえるように……。
「どうしても離脱したいという者は止めないし、咎めもしない。だがな……これだけは肝に命じてくれ。やつらが次に襲うのは、このボースウィン領の各集落だ。もしここで俺たちが負けたら……お前たちの家族や、ここで戦う俺たちを支援する近隣の街の住民が真っ先に襲われる。お前たちは、はそういうことをさせないためにここに集まってくれたんじゃないのか?」
誰しもが未だ不安そうな顔で俺を見つめているが、彼らにはもう一度思い出し、向き合ってもらわなければならない。どうして、この領軍に兵士として志願してきたのかを。
もちろん……生きる糧を得るため、という者が一番多いはずだ。だが、それだけではきっとないと俺は信じる。家族や仲間の安全を……そして、自分が生きていくことを選んだこの場所を守ることができるのは、自分たちの手でしかない――そうした気持ちがなければ、到底命懸けのこんな場所に逃げ出さずに立つことなど、できはしないはずだから。
ならば俺のすべきことは……そんなやつらの意志を、束ねること。