魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「安心しろ! 今のお前たちはきっと、この国の誰よりも強い心を持っている! そして、鍛え方も、安全地帯に閉じこもって他の犠牲にあぐらをかいてきた帝国兵なんて目じゃねえ! ボースウィン領の兵士たちこそ、帝国最強だ! そう信じ一丸となって戦えば、たとえ何倍の敵が相手だろうと、必ず勝てる! さあ、切り開くぞっ……俺たち全員が掴むべき、未来のために!」
「「未来のために――‼」」
士気が最高潮に達し、砦を背にし背水となったボースウィン領軍が敵を迎え撃つ。帝国軍は、それを三方向に別れた突撃で突き破り、包囲殲滅するつもりだ。左右は魔物……そして正面からは皇太子率いる帝国軍が迫る……。
「クリム爺、左右は任せた! 俺は皇太子とカタをつける!」
「勝手にせい! ただし、負けるなよ!」
野太い応答を確認した後、俺は精鋭部隊を率いて真っ直ぐ突撃していく。
おそらく私怨から発したであろうこの戦。どうやって兵たちを言いくるめたのかは知らないが、やつさえ倒してしまえば、軍は瓦解するはずだ。俺は前方――帝国兵の波の奥で特大の輿に担がれ、椅子の上で足を組んで悠然とこちらを見下ろすやつの姿を捉え、鋭い視線を送る。
まだ距離は遠いが、微かに歪みに満ちた秀麗な顔がこちらを嘲笑うのが見える。
それに挑発を返すかのように切っ先を突き付けると――俺は先陣を切って押し寄せる帝国兵どもの隊列に飛び込み、やつらと切り結び始めた。
(――待ってやがれ、ディオニヒト!)
「「未来のために――‼」」
士気が最高潮に達し、砦を背にし背水となったボースウィン領軍が敵を迎え撃つ。帝国軍は、それを三方向に別れた突撃で突き破り、包囲殲滅するつもりだ。左右は魔物……そして正面からは皇太子率いる帝国軍が迫る……。
「クリム爺、左右は任せた! 俺は皇太子とカタをつける!」
「勝手にせい! ただし、負けるなよ!」
野太い応答を確認した後、俺は精鋭部隊を率いて真っ直ぐ突撃していく。
おそらく私怨から発したであろうこの戦。どうやって兵たちを言いくるめたのかは知らないが、やつさえ倒してしまえば、軍は瓦解するはずだ。俺は前方――帝国兵の波の奥で特大の輿に担がれ、椅子の上で足を組んで悠然とこちらを見下ろすやつの姿を捉え、鋭い視線を送る。
まだ距離は遠いが、微かに歪みに満ちた秀麗な顔がこちらを嘲笑うのが見える。
それに挑発を返すかのように切っ先を突き付けると――俺は先陣を切って押し寄せる帝国兵どもの隊列に飛び込み、やつらと切り結び始めた。
(――待ってやがれ、ディオニヒト!)