魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

10.窮地を覆して -buddies-

 士気高揚の効果はあったか。相手第一陣の突撃でなんとか崩れず持ちこたえると、ボースウィン領軍は勇敢に互角以上の戦いを繰り広げて見せた。

 しかし……すぐに厳しい戦況が明らかとなってくる。相手の数は、魔物を含めこちらの三倍以上。頭数が多いということは、こちらに比べいくらでも補充が効く。
 特に魔物どもは、倒れた仲間のことなど一切気にせず、踏みつけにしてこちらへ挑みかかって来る。狂ったように戦うその姿に、並みの軍隊なら心が折れていてもおかしくはない。

 だが、懸命に両翼の部隊は持ちこたえ、その姿を見ていた俺含め、中央の部隊は大きく士気をあげていく。

 ただ――こちらはこちらで問題があった。

「てめえらふざけやがって! 同士討ちとかありえねえぞ! 今すぐ尻尾を巻いて王都へと帰りやがれ!」
「「…………」」

 襲い来る兵たちを薙ぎ倒しながら叫んだが、まったく反応がない。というより、自分の意志で動いているかも怪しいほど、目は虚ろで様子がおかしい。雄たけびや悲鳴の一言すら上げないのだ。
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