魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 元々自国の人間相手に振るう刃は鈍るもの。そこにたとえようもない不気味さが加わって、普段とは違うやりにくさに、なかなか部隊の進軍速度は上がらない。

 そして、先頭を突き進む俺たちと、中央本体との間が次第に離れてきた。

(くっ……両翼が持ちこたえてくれてる今の内に、やつのもとまで辿り着かなきゃならねーのに……)

 兵士たちは限界以上の力を発揮してくれている。なのに……凄まじい数の力と異様な状況で、拮抗するのがせいぜい。
 俺の肩にも、さっきのベルージ女王との対決の疲労が重くのしかかっている。

 それでも……絶対に敗北は許されない。俺が、道を切り開かなければ……!

「……左右両翼に一部隊ずつ援軍を送って耐えさせろ! 俺の周りの守りも本体に戻していい! こっちはなんとか自力でやつのもとまで辿り着く!」
「で、ですが……それでは領主様の余力が!」
「んなこと言ってる場合じゃねえ! どこか一カ所が崩れれば、そこから敵が入り込んでどうしようもなくなるんだ! 早くしろ!」
「ハッ!」
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