魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 たった千かそこらの部隊を援護に回したところでもはやどれほど助けになるのかも分からない。だが、どこか一カ所が潰れれば、たちまち針で突かれた袋のように、ボースウィン領軍はやつらに呑み込まれるだろう。

 この戦いに皆を駆り立てたのは俺だ……。俺がなんとかするしか――。

「――敵増援!? 領主様……空です! うわぁぁぁっ!」
「くっ……!?」

 しかしそこへ、どこからともなく火球が空から降り注ぎ、兵士たちの間に着弾して爆発する。
 途中からいくつかは魔法で撃ち落としたが、すべてから兵士を守ることはできない。

 それにより、一気に戦場は混乱に陥った。

「右翼部隊、被弾が続いています! 壊滅的被害!」「さ、左翼も、さっきので大きく押し込まれて……まずいぞ!」

 地上戦に集中し過ぎて、空中への配慮が遅れた。上部は城塞の結界が守ってくれると思ったが……真上にいる敵の魔物に、結界を中和する能力をでも持つやつがいたか……?

(くそっ……そこまでは想定してなかった)
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