魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
(なんだろう、この気持ち……)

 どう見ても釣り合わない、こんな人の前に立って恥ずかしいどころじゃないのだけど……どこか彼の目に触れられて、嬉しいような妙な高揚感が胸の内側をちくちくと突く。
 でも、彼はそのまま中々言葉をかけてくれなくて……。

 もしこんな状態で似合ってないとか、身の丈を弁えてないとか言われたらどうしよう。ショックでそのまままた目の前逃げだしてしまうかも……。そんなことを考えていたら、その綺麗な唇が開いた。

(なにも言わないで――!)
「なんだお前、普通にいい感じじゃねーか」
「へ……?」

 ぎゅっと瞑った目を開けて間抜け顔を晒す私に、彼はにやりと笑ってみせた。

「素材は悪くねーんだから、あんな目立たねー恰好ばっかりしてねーで、もっと着飾れって言ってんの。もったいねーな」
「え!? あ、あの……どうも」

 思いもよらない高評価をいただき、こっちは口をもごつかせるるばかりで気の利いたことも言えやしない。
< 106 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop