魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 今度は、帝国軍が進んできた軌道の斜め後ろ、国土の西方からひとつの大部隊が駆け込んできた。
 それは恐ろしい攻撃力でもって、密集していた魔物たちの背面をずたずたに切り裂いていく。

 そして、その先頭にいた、鶏のトサカみたいに派手でアホそうな色の頭は……。

「ありゃあ……バカ赤髪!?」
「さすがに名前で呼べよっ! スレイバート!」

 よく拾ったなと思えるくらいの呟きに、特大の不満そうな反応で拳を振り上げ――。

 リュドベルク公爵家の次男坊は、魔法の火炎と拳足で魔物たちを打ち倒すと、こちら側に飛び込んできた。

「っと……へっへっ、リュドベルク領一の英雄参上! ずいぶん危なかったじゃねーか、スレイバート。これでひとつ、あんたにゃ貸しができたってわけだな」

 彼は獰猛そうに頬に付いた血しぶきを拭うと、明るい声でにやりと笑ってみせる。
 その内にも、急速に背後を突かれた右翼側の魔物たちは数を減らし、ボースウィン領軍は大きく立て直されていった。
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