魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 だが……どうしても。こいつにだけは素直に礼を言う気にはなれない。

「……ふん、なに言ってやがる。俺とシルウィーの貸しの方がずっと上だ」
「おーおー……いけすかねーのは相変わらずで。これでも兄貴に無理言って兵を集めてすっ飛んで来たんだがなぁ。ま、でも、元々説得するまでもなく、領を救ったあんたらを助けたいってやつらは多かったからな……ここは黙って手を貸してやることにするぜ。だがどうなってんだ……ありゃ帝国軍の部隊じゃねえのかよ? 俺たちゃ、ベルージ王国と戦いに来たつもりだったのによ」
「それも……なんだか様子がおかしくありませんか? 妙に戦意にかけているというか……」

 初対面のラルフと軽く会釈し合うと、ルシドも眉を寄せている。そんなふたりに、俺は軽い状況説明を行った。

「おそらくだが、精霊教会の巫女ヴェロニカの仕業だろう。やつが同じような手管で人を操るのを見たことがある……」
「ヴェロニカって、俺の妹に呪いを掛けやがったやつだろ!? んなことまでできんのか!?」

 赤髪の大きなリアクションにルシドは目を丸くしていたが、俺は構わず話を続けた。

「あいつは帝国内でのその地位を隠れ蓑にして、国を滅ぼすための計画を実行に移そうとしてんだ。そして、この敵軍を率いる総大将の皇太子はやつと共謀してる。どうにかして止めないといけねえ」
「そりゃ、マジなのかよ……。とんでもねえ話っつーか」
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