魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~

11.支配ではなく導きを -purify-

 ただ突っ立っているだけなのに……その身から垂れ流された魔力が周辺の景色を歪めているようにも見える。

(ここまで変わるものなのか……。ヴェロニカめ、こいつになにをしやがった?)

 皇太子は、魔力と同じように暗く濁らせた皇室独特の青い瞳を剝き出しにしつつ、こちらへの道を一歩一歩踏みしめてきた。小回りの利かない馬上にいては不利……なにより馬も恐れてそこから動かないため、地面へと降りる。

 以前とは魔力の量質ともに大きく変化し、もはや別人にも思える姿に俺は警戒し、先手を取るのをつい躊躇った。

「くくく……どうした? ずいぶん威勢よく突っ込んできたわりに、やけに慎重ではないか、スレイバート」
「…………こちとら色々背負ってるもんがあるんでな」

 俺が敗北すれば、こいつひとり野放しにしただけで一気に形成がひっくり返る――そんな予兆を感じさせるほどに、今の皇太子の存在は異質に見えた。

「では、こちらからいくぞ!」
「――――っ!」
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