魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 それからも、無慈悲なディオニヒトの攻撃が縦横無尽に襲い掛かる。
 神速の袈裟切りが胸元を浅く切り裂き、強烈な横薙ぎが、かろうじて防御した俺を身体ごと吹き飛ばす。

「ヴェロニカだよ! 彼女が、私の力を目覚めさせてくれた! お前を圧倒し、屠るための力をな――」

 振り下ろしの強烈な圧力に耐え切れず、膝が崩れそうになる。しかしかろうじて後ろに逃れ、体勢を戻した俺は、氷の魔力を込めた剣で斜め下からやつを切り上げようとした。

 が――造作もなく弾かれると、繰り出されたやつの爪先が腹部へとめり込む。

「ぐぁっ……!」
「ははっ、まるで子供の相手をしているようなものだな!」

 大きく蹴り飛ばされ、地面を転がった俺はなんとか立ち上がったが……余裕の皇太子の姿には、前回の時と大きく立場が逆転してしまったことを悟らされた。

「スレイバート様!」「我々も加勢に!」
「お前たちは下がってろ! 邪魔だ!」
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