魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
危険を察し駆け付けようとした精鋭騎士たちを、必死の叫びで制する。おそらく彼らの力でも無駄に命を落とすだけだ。やつも自分に剣を向けた者たちにわざわざ情けをかけようとはすまい。
せめて、息を整えようと会話で時間を稼ぐ。
「てめぇ……わかってんのか。ヴェロニカは帝国中に災いの種をばら撒き、あげくこの国を滅ぼしちまおうって考えてんだぜ。そうなっちまえば、皇家もなにもねえ。崇める民もいねえのに、裸の王様を気取るつもりか?」
核心を突いたつもりの質問だったが、やつの表情は微塵の動揺も発さなかった。
そればかりか――。
「それが間違っていたのだ……国などというものに固執する必要などない」
「なん……だと!?」
とち狂ったことを突然言い出したディオニヒトは、当然のように続けた。
「人など、この世に虫の数ほど存在するではないか。至高の存在たる我が身さえあれば、どこに行こうと支配者となれるだろう。気に入らない者も、大地も、国も全て破壊し……我が征くところ、遍く民がひれ伏す。それが私にとっての理想郷! こんなちっぽけな国など捨て、世界を制する時が来たのだよ!」
「…………狂人が」
せめて、息を整えようと会話で時間を稼ぐ。
「てめぇ……わかってんのか。ヴェロニカは帝国中に災いの種をばら撒き、あげくこの国を滅ぼしちまおうって考えてんだぜ。そうなっちまえば、皇家もなにもねえ。崇める民もいねえのに、裸の王様を気取るつもりか?」
核心を突いたつもりの質問だったが、やつの表情は微塵の動揺も発さなかった。
そればかりか――。
「それが間違っていたのだ……国などというものに固執する必要などない」
「なん……だと!?」
とち狂ったことを突然言い出したディオニヒトは、当然のように続けた。
「人など、この世に虫の数ほど存在するではないか。至高の存在たる我が身さえあれば、どこに行こうと支配者となれるだろう。気に入らない者も、大地も、国も全て破壊し……我が征くところ、遍く民がひれ伏す。それが私にとっての理想郷! こんなちっぽけな国など捨て、世界を制する時が来たのだよ!」
「…………狂人が」