魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 今までもおよそ自己中心的で手に負えない性格をしていたが、ここまで来るともう、知能がある分魔物よりも性質が悪い。それでいて、さっき感じた通り底の見えない実力。こいつはもう、人の形をした災厄そのものだと思った方がいい。

 説得など通じない。なんとしてでもこいつは、ここで倒さなければ――。

 俺は生み出した魔力の氷剣を携えると、皇太子へ向けた。すると、やつの唇が嬉しそうにぐにゃりと歪む。

「そうだ、それでいい。戦意を失った者を一方的に嬲っても、力の差を思い知らせることができんからな……。遊んでやる、光栄に思え‼」
「――――っ!」

 やつの剣が青黒い炎を纏い、こちらに迫る。注視していたため、なんとか動きは追えたが、直撃すれば骨ごと溶かされそうな熱気に、皮膚が粟立つ。

 躱すのが精いっぱいで、間を取るために空に浮かべた氷の楯も、一瞬で崩される。

「つまらんな! 先日の余裕が見る影もないぞ!」
「舐めやがって……!」
< 1,070 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop