魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「そんなもの、蠅のように小うるさいだけよ! は、は、は……。そうだ、こうでなくてはな。これでこそ王に相応しき力。何人たりとも、私に触れることすらおこがましいのだ! 思い知れっ!」
「ぐうっ――――――っぅ……! げほっ……」

 三枚重ねの氷壁の上から叩きつけられた攻撃で、俺は大きく地面に吹き飛ばされた。おかげで距離は取れたが、視界が歪み、立っていられない。四つん這いのままやつを見上げる。

「それでも準備運動程度にはなったか……まだ人の形を保っているのは誉めてやろう。そして、そろそろ遊びは終わりだ!」

 ディオニヒトが集中し、頭上に剣を掲げただけで、周囲の平野から炎の柱が吹きだした。
 それらは俺たちを円形に囲み――瞬く間に死の闘技場の完成だ。

「お前を殺し、私は私のための楽園を探しに征く! すべてが私のために傅く世界をだ! そうだ……貴様の死をもつて記念すべき日としよう、我がために築かれし新しい王国のな!」
(くそっ……! なにか、ここから打開する手は……ねえのか)

 正直、勝ち目があるとは思えない……。魔力から身体能力から、すべてが足元にも及ばない。
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