魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「いいや、ヴェロニカの計画が成功していれば、あやつは自分から彼女のもとを訪れたはずだ。お前の背後に危険が迫ると知って、慈悲を乞うためにな」
「なっ――それって」

 一瞬思考が停止したが――答えることなく口元を曲げたディオニヒトの顔つきは、それだけでなにが起きたかを理解させるには十分だった。俺のせいで、シルウィーは……。

「てめぇ――っ!」

 膨大な怒りに突き動かされ、俺は滅茶苦茶に剣を振るった。それでも、幾度かやつの魔力の鎧を削っただけで、再三の反撃を受け、俺は地面に転がされる。

「バカめ。騙される方が愚かなのだ……。そしてあの娘から闇の力を取り出せば、ヴェロニカはさらなる力を手にしよう。それをもつて、このラッフェンハイム帝国滅亡の幕は上がる」
「てめえらは……」

 手を突いて立ち上がった俺の頭に、視界まで爆ぜそうな極限の怒りが湧き上がると同時――自動的に整理されたこれまでの情報が並べられていった。
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