魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 思えば、あれだけの量の呪詛や瘴気を……しかも立て続けに何カ所も連日吸い込んでいて平気なわけがない。優秀な聖属性魔法の使い手であるテレサですら、並みの瘴気でも浄化した後には一週間は静養する必要があるのだ。なれば、呪いは解かれたのではなく、シルウィーの身体の中に何らかの状態で保存されていたと考えるのが妥当。

 その事情を紐解いたヴェロニカは、俺とシルウィーを引き離すために各方面に手を回し、卑怯な手段で王都へ誘導した……。ベルージ女王からの示唆が、頭に甦る。

(なぜ……気付かなかった!)
「ハハハハ! これではあの娘が帝国滅亡の引き金を引いたも同然だな! わざわざヴェロニカのために、各地から呪いの力を集めて回ったのだから。愚かな……愚かすぎる! ハーハッハッハ!」

 ディオニヒトの哄笑が脳髄に突き刺さり、握りしめた氷剣の柄が砕けて、手のひらに食い込んだ。

「許さねえ……」
「このくらいで手向けはよいかな? そろそろお前の相手にも飽いてきた……。呪いを取り出す儀式には、ある程度の時間がかかるようだからな。先に冥府に堕ちて愛する女を待つがいい。同じ地獄にいけるとは限らんがな!」

 ディオニヒトの剣が、ようやく構えらしい構えを取り、本気の攻撃が来ることを予感させる。
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