魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ここにきて初めて心を揺らし、慄いた様子を見せたディオニヒトに向けて、俺は言い放つ。

「人が前に進めるのは、そこに希望があるからだろ! 血筋だの、渡された力だの……んな、誰かからおこぼれでもらったもんばっか振りかざしやがって……。人の想いも知ろうとせずに、ただなにもかも支配してやりたいだなんて薄汚い欲望を振りかざしてんじゃねえ! お前は、一度でも誰かになにかしてやりたいって思ったことはねえのか!」
「バ……カバカしいっ。我ら皇族はただ君臨し、すべてを献ぜられる側の者であるべき! ……そ……んな、必要は……」
「気取ってんな! 偉くて強いから、王様になれるんじゃねえ! 信じ、認めてもらえたからこそ、そうなれるんだ! それを分かってねーてめえは、皇族でもなんでもねえ、ただの搾取者だ! そんなやつが……一生懸命生きてるやつらから、なにかを奪おうとするんじゃねぇーっ!」
「うぐ……ぐぉぁぁ――っ‼」

 そしてついに、ディオニヒトはこちらの魔力に完全に飲み込まれ、敗北の雄たけびを響かせた。

「ぁ…………ぐ……うっ」

 その後、力なく倒れ伏したディオニヒトの身体から煤のような靄が上がり、浮かんでいた黒い痕がすうっと消えていく――。

 あれほど膨大だった闇の魔力も今は欠片も感じられず、おそらく呪いと同様、聖属性魔法の効果によって浄化されてしまったのだろう。
 相次ぐ戦いの疲労に身体を揺らしながらもなんとか踏みとどまり、俺は、しばし自分の手のひらを見つめる。
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