魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 クリムの剛拳が、いきなり問答無用でラルフの頭にごちんと落とされる。

「あの時はやってくれおったな!? わしの屋敷をずいぶんと破壊してくれおって! 忘れたとは言わせんぞ!」
「……あぁ~、そういやあんた、イシュボア侯爵だっけか。悪い悪い、謝りに行くの忘れてたぜ」

 へへへ、と軽い調子でラルフが頭を下げると、両腕をがっしりと組んだ状態でクリムが眉根を寄せた。

「リュドベルク家から大量の修繕費をふんだくってやろうと思っていたが、今回の働きに免じて許してやるわ。スレイバートにしろ、お前にしろ、公家のものとしては軽率が過ぎる! もっと弁えて行動せい!」
「へーへー、口うるせー爺さんだぜ。この人、昔からこうなの?」
「あはは……まぁ」

 隣で微笑んでいたルシドも、ギロリとクリムにひと睨みされ、冷や汗を流すしかない。しかし彼はそんなことよりもと、すぐに表情を鋭いものに切り替えた。

「大丈夫なんでしょうか……シルウィー様は」
「ああ、心配だぜ。あの人の無茶をしすぎるところ、嫌いじゃねえけど……。くそっ、足があるなら、オレも今すぐ駆けつけてやりてーが」
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