魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 それきり、がくりと意識を落としてしまった。

 周りを見ると、同様に多くの人々が地面に倒れていて、そして気付く……。まだ昼間だというのに、周囲がやけに暗いのは、瘴気が空を覆っているせいか。

(気付かなかったが……確かに、かなり濃いな。この濃度の瘴気が街全体にばら撒かれちまってんだとすると、やべえ……)

 俺自身の体調は、無意識に先程目覚めた聖属性の魔力で中和していたのか、さほど影響はない。しかし、この街のすべての住民が同じような状況に晒されているとすれば……。

「急がねーと……」

 俺は城の出入り口へと走った。倒れているやつらの容態は気になるが、慣れない聖属性魔法を使って今ひとりひとりを回復させても、もとを断たない限りまた同じ状況に陥るだけだ。

 後ろめたさを感じつつ手近な窓から飛び降り、氷の足場を作って空中から降りた。そこら中に苦しそうに呻く人々が倒れているが、それらを避け王宮の前庭へ出ると、白い石材で舗装された回廊に出る。そこを通り、帝国の威信を示すかのように巨大かつ壮麗に建造された門を抜ければ――王都だ。
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