魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「俺はお前を倒し、シルウィーを助けるためにここへ来た。もう容赦はしない……命が惜しかったら、あいつの身柄を返し、無茶な計画を諦めろ。シルウィーは、一体どこにいる?」

 対決も辞さない姿勢で迫ると……ヴェロニカはくすっと笑い、周りを取り囲む燭台のひとつから抜き出した蝋燭で、中央に立つ一本を灯す。そうして初めてこの部屋の全容が浮かび上がる。

 ヴェロニカが今立っているのは、周囲から一段上がった円形の儀式場。

 そこにあるのは血のような赤色で描かれたなにがしかの魔法陣と、砕けたいくつもの禍々しい謎の像……近くに倒れているあの男は確か、シルウィーの父親のゴディアか。

 しかし……そんなことよりも、俺の視線はすぐにあるものに釘付けになる。中心に据え付けられた石棺の上に、捧げもののように安置されているのは――。

「シルウィー‼」

 漆黒のドレスを着せられ、波打つ黒髪を広げた俺の婚約者。呼びかけに反応する様子はなく、血の気を失くした青白い顔には生気が感じられない。
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