魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「てめぇ、シルウィーになにをした……!?」
「利用させてもらうことにしたのよ。死に際のマルグリットがこの娘に施した魔法をね」
「わけのわからないことを――、――――っ!?」

 駆け寄ろうとした俺の手のひらがバチッとなにかに弾かれた。闇の結界――それは儀式場の高台になったところを覆うように発生している。俺は覚えたての聖属性魔法で浄化を試みるが、些細な罅が入るだけで、すぐに塞がってしまう。

「く、そっ……!」
「へえ……少し見ないうちにそんな力を身に着けていたなんてね。ディオニヒトが負けた理由がなんとなく分かったわ。でも、まだそれも満足には使いこなせないみたいだし、時間潰しに、少しだけ話をしてあげましょうか」
「なん……の、つもりだ」

 しかし、俺の言葉を無視すると、マルグリットは石棺の隅に腰を掛け、悠然と足を組んで語り出す。

「ふ、ふふっ……私もこの娘が最初、ただの出来損ないだと信じて疑っていなかったわ。一応生まれた頃から監視はしていたけれど、それも、シルウィーが魔力を喪うにつれて、少しずつ興味を失っていった。しかし、それもマルグリットの狙いだったんでしょうね……」

 彼女の指が、まるで愛し子の触れるようにシルウィーの髪を優しく撫でる。俺はそれをやめさせようともがいたが、結界はいくら魔力を捻じ込もうとしても、こちらの侵入を阻み続ける。
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