魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「――この娘の身体を調べてみてようやくわかった。マルグリットは、自分の命と引き換えに、娘に触れたあらゆる魔法を吸収して内に溜め込み、徐々に彼女自身への力として還元する魔法を、長い時間を掛けて作り上げていったようね。古の偉大な魔法士に勝るとも劣らぬ、空間、生命、他にも様々な系統の魔法を織り交ぜた、相当緻密な魔法。その特別な魔法はマルグリットの死に際に完成し……そして本来なら、膨大な魔力とあらゆる魔法への抵抗力を備えた最強の魔法士が生まれるはずだった……」

 しかし、どこか残念そうにヴェロニカは首を振る。

「でも悲しいかな――いかな天才魔法士マルグリットといえど、あの状態ではその魔法の維持に必要な魔力が生み出せず、完全な魔法の構築には一歩届かなかった。そこで、彼女は苦渋の決断をしたの。生まれてくるシルウィー自身の魔力を使うことで、強引な魔法の完成と維持を試みたのよ」

 仇敵が死に至るまで用心深く監視していたヴェロニカの憶測では……マルグリットは自身の魔力の限界を感じ、このままでは赤子が身の内に取り込んだ呪いを処理しきれなくなると判断したのだろう、ということだ。よってやむなく、彼女は赤子自身の魔力をそちらに回すことにした。

 だが……それを行う過程でシルウィーに掛けられた呪いは中途半端に分解され、成長と同時に、体表面の内側に魔力の放出を阻害する膜を生じさせてしまったという。
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