魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そしてマルグリットの死後も、シルウィーの身体の中で呪いの分解はゆっくりと続き、彼女の身体から膨大な魔力を奪い去っていった。そのふたつの問題が、シルウィーが魔力を喪うと同時に、いかなる魔法も扱えない原因になってしまったのだと――ヴェロニカは説明を締めくくる。

 その最中にも、彼女の背中はどんどん震え、話が終わると共に爆発するような哄笑が口から零れた。

「アハハハハハッ――なんてこと! そうして、シルウィーは本来マルグリットを凌ぐかもしれない才能を持ちながら、すべてを失い、なんの魔法も使えない役立たずとして周りに虐げられることになったのよ! フ、クククククッ……本当におかしいったら! 子を思う親の気持ちが、娘の人生に茨の道を敷くなんてね!」
「今すぐその薄汚ねえ口を閉じて、そいつから離れやがれ! シルウィーにそんな風にしていいのは、母親のマルグリットだけだ!」

 間違ってもシルウィーには聞かせられない言葉に激高し、俺は両手を結界に叩きつける。だが、ヴェロニカはこの上なく優しい手つきで、シルウィーの頬を優し気に撫でて見せた。

「あら、私だってこの子のことが大切よ……? もちろん、この子自身がじゃなくて、その身の中に溜め込まれた呪いの力の方が……だけれど」

 ヴェロニカはその細指を額に当て、静かに目を伏せる。指先で、黒い光がぱちぱちと瞬く。
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