魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 そして……ヴェロニカは、最も俺にとって許し難い一言を言い放った。

「この娘の身体は、私がもらう。ヴェロニカよりよほど優れた魔法の才能を持つこの子ならば、私の呪いの力を存分に振るうことができるわ! そうしたら、まずはあなたたちよ。自らが守ろうとしていた人々を、この娘自身の手で滅ぼさせるの! うふふ……とても素敵で、愉快で、残酷で……この世界の幕引きに相応しい話になると思わない?」
「………………」

 夢を語る少女のように、無垢な笑顔を見せるヴェロニカ。その姿に、俺は憤りや憎しみや、あらゆる負の感情がある種の閾値を超え、言葉を放つことすらできない。

 ただ……俺がそれよりも強く願うのは、今すぐシルウィーのもとに駆け付けたい――それだけで。
 夢中で俺は手のひらを結界にあてがうと、弾け飛びそうになる衝撃を強引に抑えつけながら、一心に祈る。

 ――大切な人をこの手の中に取り戻し、抱きしめたい……。
 ――彼女とこの先もずっと、隣で同じ道を歩いていきたい。

 心に燻るありったけの想いだけを指先に籠め、濁った闇の壁へと突き立てる。

「ひ……ら、けぇぇぇっ!」
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