魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「シルウィー……? なあシルウィー、無事、なんだよな……?」

 俺は凍えたような心持ちで、その名前を繰り返す。

 彼女がいつもの声で、俺の名を呼び返してくれることを祈りながら。
 優しい笑顔が、こちらを見た。

『スレイバート様……?』

 触れかけたその唇が、俺の名前をそう呼んでくれたと……思ったのに――。

 急にシルウィーの指が伸びて、俺の胸をどんと追いやる。

「え……」

 その間にも、彼女は俺の腕の中から抜け出していて。

 するりと立ち上がると、掠れ声を漏らした俺を見下ろし、静かに嗤った。

「その女は、もういない」
「…………?」
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