魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「ハッハハハハハ、たまらないな……いい顔だ。……そうだ、お前も色々これまで苦しんだだろう。この際、その痛みや苦痛を解放してやったらどうだ? もしかすると我々と同じように……この力に目覚めることができるかもしれないぞ。さあ、心に絶望を売り渡し、世界を黒く染めよう。そうすれば、残るのは私とお前だけだ……」

 闇は、ぐっと顔を近づけると、俺の耳に誘惑の言葉を吹きかける。

「シルウィーを失った傷は、この私が埋めてあげよう。静かになった世界が終わりを告げる時まで、ふたりで互いの傷を舐め合って過ごす。それもまた、ひとつの幸せの形かもしれない」

 愛する女の声でされる、甘美な囁きが闇の魔力と共に俺を操ろうと取り巻いて来る。ひどく冷たい身体に抱かれながら灼熱の痛みを感じ、思考が溶けて判断力がなくなってゆく。

『スレイバート様、私と永遠に幸せな時を過ごしましょう?』

 それは幻聴か……実際に聞こえてきた言葉なのか。

 目の前のシルウィーの顔が、ひどく優しく微笑んでいるように見えた。
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