魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 ペンダントから発する光は、さらに強くなり俺たちを包み込んだ。まるで、淡雪が火照った身体を冷やすかのように、身体も心も落ち着いていく。

 目の前の操られたシルウィーの身体が、煩悶するように激しくのたうつ……確実に、苦しんでいる。
 それを見た俺は、これがやつを引き剥がす最後の機会なのだと思い定め、必死に魔力を振り絞ってシルウィーのことだけを思い描いた。

 ――一緒に、ボースウィン城に戻れたら……俺は彼女と、なにをしよう。

 ――もっとあいつの色々な表情が見たい。恥じらう顔、怒る顔、喜ぶ顔、驚いている顔。

 ――彼女と共に、俺たちの手が届く限りの新しい体験と、幸せを追い求めてゆきたい。俺は……これからも多くの人に必要とされ、たくさんの想いや言葉を交わす彼女の一番でありたいんだ。

 ――だから……もう一度この腕に掴ませてほしい。たったひとりの……心から俺を理解してくれる、特別で大切な伴侶を――。

『――聞こえていますか、スレイバート……? ……わずかな時だとはいえ、あなたを見守ることができてよかった。あなたはどうか、ずっと愛した人と一緒に……』
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