魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 迸る絶叫。怒涛の勢いでシルウィーの背中から、黒いなにかが抜け出していく。
 徐々に弱まりゆく光にやっと周囲が輪郭を取り戻し……。

 そして……俺がゆっくりと目を開けると。

「おい……生きてるか? シルウィー……!」

 そこにはぐったりとしたシルウィーの身体があった。
 彼女を抱えた手に、とく、とくと弱い脈拍が伝わってきて。

「シルウィー……?」

 俺はもう何度繰り返したか分からない彼女の名前を……頼りなく耳の側で囁く。

「……ん、ぅ……」

 すると、瞼が震え……。

 まるで永い眠りから目覚めたかのようにゆっくりと開いた瞳が、こちらを見た。
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