魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
『ううっ…………苦しい』

 息ができないほどの圧力に押し潰されそうになりながら、私は聞いた。ぴし、ぴし……と軋むような音を。

 心の奥底にある、金色の揺り籠――母が編んでくれた魔法が悲鳴を上げているのが分かる。膨大すぎる闇の力に耐え切れなくなり始めているのだ。

『ああ……お願い、やめて!』

 そう懇願するも、もちろん私の心の中の声など、誰にも響かない。
 たったひとつ……母が私のために与えてくれたものが、無残にも壊されていく……。

 その悲しい調べを聞きながら私の耳が捕らえたのは、この場に現れるはずのなかったひとりの人物の声だった。

『シルウィー、どこだっ!』

 大好きな、スレイバート様の声がしている……。
< 1,122 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop