魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
彼が無事でいてくれて嬉しい反面、どうしてこんなところへ来てしまったのかという思いが私の頭を過ぎった。彼の声からは疲労が隠し切れず、苦しい戦いを乗り越えて来たばかりなのは見えなくてもわかる。
闇の精の力は、底が見えない。声が出せたならすぐにこの場から脱出してほしいと伝えただろう。でもそんなことすらできず、私はしばらくふたりの舌戦をただ聞いていた。
わざわざ私に聞こえさせるようにした闇の精の告白と、スレイバート様の苦痛の咆哮が胸を抉る中……少しずつ、金色の揺り籠に刻まれ始めたひび割れは大きくなっていく。
そして――。
『この娘の身体は私がもらうわ――自らが守ろうとしていた人々を、この娘自身の手で滅ぼさせるの――』
そんなヴェロニカの声が外から届き、私の背筋は凍り付いた。それだけは絶対いや。私の自らの手で、テレサを初めとした、色んな場所で出会ってきた大切な人たちを――なにより、スレイバート様のことを、傷付けるなんて。
『それだけはやめてっ! そんなの…………ひどすぎる!』
心の底からの絶叫も、むしろ闇の精にとっては格好の燃料になったのか……さらに私の中に、どろどろとしたものが――数百年以上前からこの地を滅ぼそうと願ってきた負の思念が、一気に注ぎ込まれ――――!
闇の精の力は、底が見えない。声が出せたならすぐにこの場から脱出してほしいと伝えただろう。でもそんなことすらできず、私はしばらくふたりの舌戦をただ聞いていた。
わざわざ私に聞こえさせるようにした闇の精の告白と、スレイバート様の苦痛の咆哮が胸を抉る中……少しずつ、金色の揺り籠に刻まれ始めたひび割れは大きくなっていく。
そして――。
『この娘の身体は私がもらうわ――自らが守ろうとしていた人々を、この娘自身の手で滅ぼさせるの――』
そんなヴェロニカの声が外から届き、私の背筋は凍り付いた。それだけは絶対いや。私の自らの手で、テレサを初めとした、色んな場所で出会ってきた大切な人たちを――なにより、スレイバート様のことを、傷付けるなんて。
『それだけはやめてっ! そんなの…………ひどすぎる!』
心の底からの絶叫も、むしろ闇の精にとっては格好の燃料になったのか……さらに私の中に、どろどろとしたものが――数百年以上前からこの地を滅ぼそうと願ってきた負の思念が、一気に注ぎ込まれ――――!