魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 実家での――母が命懸けで私のことを救ってくれたこと。父が呪いと戦い続けていたことも知らずに過ごしていた――実りの無い十七年間。
 その後偶然出会ったボースウィン領の人たちが、私の心を癒してくれた。そして、私なんかにも誰かに手を伸ばすことができるんだと、教えてくれた。そこからは、少しずつ自分の周りに起きていた出来事を思い遣る余裕もでき、いがみ合う形になったラルフさんとも和解し、カヤさんを救うことができた。

 スレイバート様の助けもあって、母の育ちを知るメレーナさんとも会うことができて、今まで朧気だった母親の姿がやっと、少しだけくっきりとしてきて……父とも言葉を交わす覚悟ができた。もう少しで……すべてのことに区切りが付き、新しい世界に踏み出せるような、そんな気がしていた……。

 なのに……これですべてが終わる。終わってしまう……!
 二度ともう……皆に会えない。誰とも別れを言えずに、私は消えてしまう。

「……いや、だよ」

 怖い、寂しい、いなくなりたくない。どうして私だけこんな……そんな後ろ向きな感情に包まれ、心が壊れそうになりながらも……私の胸の奥底にはひとかけらだけ、ひとりの人に向けた輝かしい思いが転がっていた。
< 1,125 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop