魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 大切な人が、いるんだ――誰よりも、失いたくない人が……。
 その人さえ生きていてくれたなら、もうなにもいらないくらいの――。

「スレイバート様……」

 輪郭がぼんやりとしてきた今でも、薬指にあるその感触だけは、はっきりと感じられる。
 あの人と、私を繋ぐ、唯一無二の双子石。お互いを何よりも特別な相手だと、認め合った証。

 せめて……最後くらいは。どうせ消えるのなら……大好きな人の無事を祈っていたい。
 ずっとこの先も、一緒に過ごしたかった……。けれど、それが叶わないのなら、せめて彼だけはどんな世界になっても生き抜いて欲しい。私のことなんて、忘れてしまってもいいから。

「あなただけは……消えないで」

 まやかしでも、誤魔化しでもなんでもいい。それだけを私は願う……。

 そうしていると、不思議と恐怖は安らいでいく。今まで空っぽだった心に……力が湧いてくる、ような……。

「…………えっ!?」
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