魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
『――じっとしていて』
左手首に金色の光の粒が集まり、鎖のように私の手を取り巻く。
そして、自由になっているもう一方の先端は、流れ星のように遠くで待つ光へと突き進み、やがて――私の身体は急速にそちらへと引っ張られて行った。
「きゃあっ!」
『もう大丈夫。後はこのまま私に任せ、あなたは大切な人たちのことだけを考えなさい。この先、望む未来のことを……』
「…………」
物凄い速度で鎖が私の身体を巻き取り、死の世界から……もとの私の身体の中へと近づけていく。それは本当に、体感時間にしてほんの数秒のことで、満足に思考を浮かべる時間もなかった。でも……。
『ふふ……まさかあの生意気小僧が、本当にあなたを連れ出しに来ちゃうなんてね……。だからこの世の中、捨てたもんじゃないって思うのよ』
苦笑の気配の混ざった、聞いたことのない……ハスキーでよく通る声。でも……私にはそれが誰だか分かる、絶対に。
左手首に金色の光の粒が集まり、鎖のように私の手を取り巻く。
そして、自由になっているもう一方の先端は、流れ星のように遠くで待つ光へと突き進み、やがて――私の身体は急速にそちらへと引っ張られて行った。
「きゃあっ!」
『もう大丈夫。後はこのまま私に任せ、あなたは大切な人たちのことだけを考えなさい。この先、望む未来のことを……』
「…………」
物凄い速度で鎖が私の身体を巻き取り、死の世界から……もとの私の身体の中へと近づけていく。それは本当に、体感時間にしてほんの数秒のことで、満足に思考を浮かべる時間もなかった。でも……。
『ふふ……まさかあの生意気小僧が、本当にあなたを連れ出しに来ちゃうなんてね……。だからこの世の中、捨てたもんじゃないって思うのよ』
苦笑の気配の混ざった、聞いたことのない……ハスキーでよく通る声。でも……私にはそれが誰だか分かる、絶対に。