魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
惜しむらくは……こんなにも近くにいたことに、もっと早く気付ければよかったけれど……。
(私もいつか、あなたみたいに……)
――でも、その余韻に浸っている時間は今はない。
「ありがとう。行ってきます……」
かつては私に命を譲り、そして今、もとの世界へと帰らせてくれた母にもう一度だけ感謝の言葉を告げると――私は絶望の眠りから目覚めるために、振り返らず歩き出す。
すぐそこには……涼やかな北の空気を思わせる、薄青と白銀の光が待ち受けていて。
私はしっかりとそれを見据えた後、指先で触れた――。
(私もいつか、あなたみたいに……)
――でも、その余韻に浸っている時間は今はない。
「ありがとう。行ってきます……」
かつては私に命を譲り、そして今、もとの世界へと帰らせてくれた母にもう一度だけ感謝の言葉を告げると――私は絶望の眠りから目覚めるために、振り返らず歩き出す。
すぐそこには……涼やかな北の空気を思わせる、薄青と白銀の光が待ち受けていて。
私はしっかりとそれを見据えた後、指先で触れた――。