魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
『忌々しい……よもや、新たな依り代だけではなく、長きに渡り隠れ蓑にしてきたあの体まで失うとはな……。だが、もういい……これだけの力があれば、この帝国で更なる悲劇を引き起こし、大地から新たな闇の力を引き出すことも叶うだろう』
「くっ…………帝国中、いや、大陸各地へ災いをばら撒こうとしてやがんのか」

 遥か頭上に浮かび上がった闇の精霊。
 それを中心にして、生み出された巨大な黒雲がぐるぐると渦を巻き、ずっと遠い空まで瘴気が振り撒かれてゆくのが見える。まさしく、天災の予兆。

 このままあれを放置していれば……ボースウィン領やリュドベルク領のように、第三、第四の災禍が帝国のどこかを襲うことは免れない。いや、それどころか……。

 力強くスレイバート様が私を見つめてきた。

「シルウィー……俺はとにかく、瘴気がこの王都の外に出るのを止める。そうしたら……お前の力であいつをどうにかできないか?」
「えっ……ええと」

 当然ながら、ここには私たちしかいない。
 その提案に戸惑ってしまいつつも……できるのだろうかと、私は自分の身体を見下ろした。
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