魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 まるで自分すらも含めたすべてに――意志が存在していることそのものが誤りなのだという、叩きつけるような独白が黒い波動となって襲い来た。本来ひとつの領土を丸ごと災いに沈めるような、恐ろしい呪いの力に呑み込まれ、息を吸うことすら覚束ない。

 でも……いやだ。
 私は彼女の言うことに納得したくない。

 ちらりと眼下を見れば、そこでは荒い息を吐きながら、スレイバート様が渾身の魔力を振り絞っている。
 それを確認すると、私は迫りくる呪いの濁流の中に手を突き入れた。

 それらを中和し、一歩ずつ、一歩ずつ進みながら、自らの想いを打ち明けてゆく。

「人は、確かに暗く愚かな生き物なのかも知れません。でも……それだけじゃないのはあなたにだって分かるはず。だって……そうであれば、今私たちはこうしてあなたの前に立てていないでしょう?」
『うるさい! 目障りだ、消えろ!』

 幾度も幾度も、負の感情の大波が叩きつけられ、それは私の身体を押し退けようとする。

 でも……一歩下がったなら、二歩進めばいい。その身体が遠のいたなら、こちらがその分、手を伸ばせばいい。
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