魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「違います……ただ、考えないといけないと思ったんです。せっかくこの世界に生まれて来たのに……光が当たらない部分があると知って、私たちはどうしたらいいんだろうなって……」

 大切なものを見つけたり、手にすることができなかった者たち。
 生まれながらに差別や無理解に晒され……希望を見いだすことなく、命を終わらされてしまったそんな存在が世の中にはごまんといて。苦しみを誰とも分け合えないまま、ある日……誰に気に留められることもなく、いなくなってしまう。

 そんな寂しいことが、あってよいのか。誰かの笑顔の裏で……なにも持たなくとも、一生懸命に命の価値を示そうとしている者たちの涙が、今もこの大地に沁み込んでいるのだとしたら。

「私は……失くしたい」

 瞳に滲んだ涙を指先で払い飛ばすと……さらに私は指先を伸ばし、闇の精霊へと近づけてゆく。

「今も苦しみを抱えるたくさんの人たちは、きっと助けてもらえなかった時の私と、同じなんです。多くの人に支えられて幸せになれたからって……そこから目を背けたくなんてない。だったら……示さないと!」

 触れなければ、この想いは伝わらない。
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