魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
「自分を本当に絶望させてしまうのは、自分なんだって! 生きることが苦し過ぎて、諦めて自分の世界に閉じこもってしまったとしても……。もう一度顔を上げることができれば……どこかに、そんなあなたを引っ張りだしてくれる誰かが、いるんだって!」

 私はずっと不思議で仕方なかった。どうして……実家で生まれや父親を呪う時、私は目をきつく開けて睨んでいたというのに――誰かを想って祈る時は目を閉じるのだろうって。どちらも心に渦巻く感情を誰かに向ける、そんな想いの強さでは等しいものがあるはずなのに……。

 それは、呪いは一方的に誰かに対して叩きつけるためのもので、祈りは……誰かと感じた繋がりの上にそっと乗せ、相手へと運んでもらうものだから。きっと、私たちは相手との絆を認識した時に、目に見えない心の世界で繋がるのだ。その場所では距離も時間もきっと関係ない……受け取り手とのそんな繋がりに触れたくて、意識をただ……深く沈みこませる。

 なら、本当はもしかしたら……目を閉じたり両手を握る必要なんて、ないのかも。

 お互いを受け入れたいという意志さえあるのならば、間にどんな距離や障害があったとしても……想いは――祈りは届く。

 私は不慣れな魔法で空を踏み出すのを止めて、彼女のことを真剣に見据え、両手を広げた。
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