魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 なにができるかはまだ分からなくとも、絶対にひとつひとつ、可能なことから始めてゆく――。
 その意志だけは、はっきりと目に宿す。

『来るな……やめろ』

 拒絶の言葉を吐きながらも……闇の精はゆっくりと動きを止め、私を待ち受けてくれているように思えた。
 和らいでいく闇の力を浄化してゆく間にも……彼らの声なき声が聞こえてくる。皆、苦しくて苦しくて、やり場のない気持ちをどうしたらいいか分からないままだったのだ。それらはもう、解放してあげないといけない。

 そうしてついに私は……報われなかった存在たちの代弁者のもとまで、辿り着いた。

「お願いします。私たちに、もう少しだけ……そんな状況を変えてゆく時間をください。きっと皆、怖くて仕方ないんです。生きることは辛くて大変なことだから……」

 ――世の中は……甘くない。そこにある一面は、限られた資源や場所の奪い合いだから。
 ――誰かの行動ひとつで、自分が輪の中から弾き出されてしまう。
 ――大きな力ひとつで、正しい誰かの小さな声などかき消されてしまう。
 ――人と違った考えを持っているだけで、受け入れてもらえなくなる。

 そんな恐れを抱いたまま、私たちはずっと生きていかないといけなくて。
< 1,147 / 1,187 >

この作品をシェア

pagetop