魔力を喪った賢者の娘は、とある帝国公爵の呪いを解いてあげたのです……が? ~傾く領地を立て直したら、彼が私に傾いてきた~
 他人を信じる証がどこにも見いだせず、探そうとするうちに疑いばかりが膨れ上がる――そうして弱った心が、周りを敵に回してしまう。

 でも……それらが争いへと行きつく前に、踏みとどまる方法を見つけられたなら。

『なぜだ! どうしてお前はそんな風に変わってしまった! お前は……私たちと同じものを抱えていたはずだ! 親を憎ませ、不幸な境遇を強いて、相次ぐ苦難を与えていった! その度に傷付いて、ずっと誰かを憎しみ、不満を抱いてきたはずだろう!』

 理解したくないのに、聞かずにはいられないというように、闇の精の声が震えた。その言葉に対し、私は――。

「でも、私は……誰かの優しさに触れることができたから」

 たくさんの人たちが与えてくれた、心からの笑顔を浮かべた。最後の隙間が埋まり……伸ばした両手が、ついに漆黒の球体の外郭に触れる。それはしばらく私の手を強く弾こうと堅い感触のまま震えていたが、やがて……その振動は収まり、諦めたように静かになっていく。

「皆のくれた想いが、私に……誰かのために祈るだけの、小さな勇気を与えてくれたんです」
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